2005年11月10日
「蝉しぐれ」と日本人の美徳
★★★★★[100点](0-100点)
現在、仕事で日本滞在中で、昨夜は念願の「蝉しぐれ」を見てきました。あまりの感動に、終わったあと何をすればいいのかわからなくなって、ぼーっとしておりました。
いろいろな要素の詰まったストーリーですが、あとで公式サイトで試写会を見た人のコメントを読むと、「忘れていた日本人のよさがここにある」といった言葉が多く見られました。息をのむほど美しい日本の春夏秋冬の風景とともに、「日本人の気高さ」を思い起こさせる映画なのだと思います。
この日本人の美徳とは、「自分の運命や置かれた環境を、たとえそれが不条理なものだったとしても、それをすべて受け入れ、その範囲の中で前向きに生きていく」ということだと思います。「矜持」という言葉も合うかもしれません。
それは、世上よく言われるように、現代の日本人が捨ててしまったものでは決してなく、ただ、日頃それを意識しないだけです。戦後の荒廃から立ち直ったのも、何度かの経済危機を乗り切ってきたのも、そして昨今不景気と言われながらも、他の多くの国のように犯罪や麻薬に染まっていくことがなく、東京の街がどんどんきれいになっていくのも、そのおかげなのだと思います。
「蝉しぐれ」の主人公・牧文四郎は、不条理に父を殺され、幼い恋の相手とも引き裂かれるが、すねたり、仇に復讐を試みたりせず、自分の役割をきちんと果たして精進を続けます。そして、想い続けた叶わぬ恋の相手を巻き込む、不条理な事態に直面しても、身を捨てて前向きに解決していこうとします。そして心をうつラストシーン。恋の相手、ふくもやはり、「矜持」をもって生きている美しい女性です。
こちらに来る飛行機の中では、前に見た「亡国のイージス」を上映していて、隣席の米国人男性がそれを見ていたので、「どう思いましたか?」とちょっと聞いてみました。いろいろな話をしたのですが、その中で彼は、「日本は世界に誇るべきものをもたない亡国になってしまった」というセリフを「日本人はそう思っているのかな、興味深い」と言ったので、「たしかに、そう思っている人は多いだろう。日本人は誇るべきものをたくさん持っているのに、それを意識していないように思う。」と答えました。
そして、「亡国のイージス」の中では、上官の不可解な総員離艦命令に整然と従うクルーを見ながら、敵役の某国スパイが「さすがは日本人、実に素直な民族だ」とせせら笑う場面があります。なるほど、この美徳は皮肉な見方をすれば、そういうことになるかもしれません。
でも、やはりそれは違います。唯々諾々と従うだけではなく、前向きに生きていく知恵と力があるのだと思います。そして、それは今も昔も、世界に対して誇るべきものであると思います。
映画としては、戦闘場面にややツッコミどころがありますが、市川染五郎さんの刀さばきや佇まいのあまりの美しさと、匂い立つような色気にボーナス点をつけて、満点とします。「たそがれ清兵衛」で新時代を迎えた日本の時代劇は、もう後戻りができないものになったようです。真田さんや、市川さんのような、美しい刀さばきと佇まいをもった、時代劇のできる役者さんがどんどん増えてほしいものです。
「蝉しぐれ」と日本人の美徳 on 邦画セントラル : 2005年11月10日 06:43
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今回で最後。『蝉しぐれ』である。
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