ジャンクションより 
ネットとシネマ、日本とアメリカの合流点から映画を語る
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2005年12月30日
アメリカの映画興業売上の不振-そのココロは?
私の本業がコンサルタントなので、ついこういう「産業動向」というのに目がいってしまうのをご容赦ください。
昨日の地元紙「サンフランシスコ・クロニクル」と、今日付の日経新聞に、アメリカの映画業界売上が20年ぶりに前年を下回ったとの記事がありました。クロニクル紙では統計の出所が明記してありませんが、「劇場のチケット売上は3年連続の減少、全体として(DVDなど含む?)は10年来初の減少」とあり、日経ではBoxOfficeMojoの統計から、「クリスマス後時点で興行収入(チケットのみ??)が前年同期比6.2%減で、1991年の-4.4%を上回り85年の7%に匹敵する大幅減」との書き方です。DVD出荷も増えているけれど、増加率がそれまでの前年比50%増というペースから大幅ダウンの13%だったとのことです。(DVD数字出典はDigital Entertainment Group)
クロニクルでは減少の原因として「ホームシアターの普及」、日経では「ケーブルテレビのビデオ・オン・デマンド(VOD)などのニューメディア普及」を挙げています。そして、いずれも(そしてこれまでにいくつか読んだあちこちの記事でも記憶がありますが)「とはいっても、今年はヒット作に恵まれなかったのが最大の問題」という点が必ず付け加えられています。
ネット業界に近い私が端から見ていると、ホームシアターやVODに直接顧客を奪われたということよりも、もっと間接的ながらもっと根本的な問題、「好みの細分化」ということがあるのではないかなー、という気もしています。
メディアの多様化と好みの細分化は、これまでもずっと続いてきたことです。日本でヒット中の「Always-三丁目の夕日」の時代、ご近所の皆が何十人も一台のテレビの前に集まって力道山のプロレスに熱狂したような現象は、すでに遠い時代のこと。テレビのチャンネル数も増え、ビデオ、DVD、携帯などなど、メディアの数はどんどん増えてきました。そして、ここ数年はインターネットのおかげで、「対象となる顧客数の少ないニッチなモノでもネット上なら採算がとれる」という、「Long Tail」と呼ばれる現象が顕著になりました。ものすごくニッチなもののオタクでも、ネット上ならば世界のどこかに必ず同好の士が見つかり、情報が見つかり、熱狂することができる時代が来たのです。
映画の世界でも、これまでのようにハリウッドのお仕着せ大作映画に皆が熱中する時代は過ぎ、人々の好みは細分化してしまったのではないでしょうか。
それなのに、ハリウッド映画の制作コストは増加の一途。少し以前に俳優の出演料が高騰して大騒ぎになりましたが、最近ではCGを多用するためのコストも上昇しています。
たくさん制作費をかけたら、たくさん売れなければならない。そのためには、なるべく多くの人の好みに合うように、「最大公約数」的な映画にならざるを得ない。しかし、人々の好みは細分化して「最大公約数」的なものには興味がない。
そんな悪循環に陥っているような気がします。ネット商売で成功するための欠かせないファクターは、「制作・運営コストが徹底的に低いこと」です。ハリウッドも、コストと顧客ターゲットの関係を見直さざるを得ない、ということのように思うのです。
例えば、「SAYURI」。大きい費用をかけた大作映画になってしまったがために、キャストは名の売れた中国人女優を起用する、テーストは日本にこだわるよりもアメリカ人のテーストに合わせた「無国籍アジア的」なものにする、という妥協策を採った結果、どっちつかずのものになってしまった、という批判があります。もっとニッチ向けの小品で、日本人女優を主役にして、日本のディテールに忠実に作ったらよかったのに・・ということなのですが、今のハリウッドの仕組みでは、こうした「ちゃんとした小品」を採算に乗せることができないのも現実です。
新技術や「違法コピー」に八つ当たりしているヒマがあったら、逆らえない現実にどうやって対処するか真面目に考えたほうがいいように、シリコンバレー的には思うのですが・・・
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2005年12月15日
真田さん主演「無極」ゴールデングローブ賞ノミネートとアカデミー賞裏話
真田広之さん主演の中国映画「無極 - プロミス」が、アメリカのゴールデングローブ賞外国語映画賞部門にノミネートされました!!
このほかノミネートされているのは、「カンフー・ハッスル」(中国)、"JOYEUX NOEL"(フランス)、"PARADISE NOW"(パレスチナ)、"TSOTSI"(南アフリカ)だそうです。ハリウッド通の友人によると、このうち、フランスと南アフリカの映画はすでにアメリカの業界では話題を集めているようで、その意味で有力と見られているようです。「無極」は、当初は今週末にアメリカで公開の予定だったのが、直前に無期延期となっています。中国で15日に世界最初に公開の予定なのですが、賞を決める審査員達がまだあまり見ておらず、広報活動も全くないために情報が出ていない、という不利な状況なのだそうです。ロサンゼルスで12/23に特別上映があるようですが、なんとか巻き返してほしいものです。発表は1/16、さて、どうなりますでしょうか・・・
さて、さらに問題なアカデミー賞では、ノミネーションのやり方がゴールデングローブとは違い、タイミングも違うということで、必ずしもゴールデングローブを受賞した作品が有利ということはないそうです。
「IndieWire」記事によると、アカデミー賞外国語映画賞部門のノミネートは、こんな手順で決められます。アカデミー賞では、55ヵ国から提出された作品を委員が見てノミネーションを決めます。55の作品を3つのグループに分け、ノミネート担当の委員も3手に分かれて見て(つまり、一人の委員がだいたい20本の外国語映画を見続けるワケですな・・大変です)すべての作品を評価し、点数の多いものから5本がノミネートされます。ここでも、事前に「本国や映画祭での評判」などの情報があるものがもちろん有利ですが、委員は今まで知らなかったものを発見すると嬉しくて良い点をつける、という傾向もあるらしく、このため「意外」な作品がノミネートされることがあります。2004年にノミネートされた「たそがれ清兵衛」は、この種の「幸運」を引き当てたのだそうです。
で、少数の委員が決めたノミネーションの中から、アカデミー会員全員の投票で賞が決まります。ここでは、ノミネーションの時のように、全員すべて見るという義務はありませんから、見たことのあるもの、評判がいいと聞いたものが当然有利です。特に外国語映画は、一つも見たことがない会員だって多いワケですから、すでにアメリカで公開されているモノが絶対有利です。「たそがれ」は、その後のアメリカ公開時でさえ、広報も宣伝もわずかなもので、アカデミー賞のときなど、全く誰も何も知らない状態で、広報活動もゼロでした。その時点で広報活動のフォローアップがあれば、きっと受賞していた、とは、この映画を見た多くの人が感じていることです。
真田さん主演「無極」ゴールデングローブ賞ノミネートとアカデミー賞裏話 on 邦画セントラル : 04:47 | コメント (2) | トラックバック
2005年12月13日
ハリウッドはどうやってできたか?
"Memoirs of a Geisha(サユリ)"、"Brokeback Mountain"、"Syriana"など、見たい映画が一斉にこの週末に公開になったのですが、激しく風邪をひいてしまって全く動くこともできず、すべて見られずにいます・・・
それで、闘病中に仕方なく本を読み始めました。このところ、デジタル映像などの著作権問題に関心を持っているので、この分野でシリコンバレーのヒーローである、スタンフォード大学法学部のローレンス・レッシグ教授の「Free Culture」という本です。めっちゃ面白い本ですが、本自体のお話は別の機会に本業ブログのほうに書くとして、この本の中の面白いエピソードの一つ、「ハリウッドはどうやってできたか」というお話を紹介します。
ハリウッドの映画制作者の業界団体MPAA(全米映画協会)は、映画の「海賊版」を撲滅するとの旗印を掲げ、わがシリコンバレーのP2P技術の会社などをがんがん訴訟していぢめていますが、ハリウッドというのは実は「海賊」たちがその発祥だった、というのはご存知でしたか?私はマッタク知りませんでした。
映画を発明したのは、ご存知トーマス・エジソン。彼は東海岸ニュージャージー州(ニューヨークに隣接する)の人で、映画を発明した後、この技術の特許を守るための会社を設立したそうです。そして、映画を制作しようとする人は、必ずこの会社から特許使用の許可を得てお金を払わなければいけないようになりました。しかし、「インディペンデンツ」と呼ばれた一群の制作者達は、特許の許可を得ずに勝手にやり始めました。エジソンの会社は、こうした「海賊達」を見つけると、制作現場から機器を盗み出したり、セットを壊したり、人身被害まで出るような強烈な嫌がらせをしたのだそうです。
20世紀もまだ初めの頃のこと、「それでは、彼らの手が届かないほど、遠くまで行ってしまえ」ということで、この海賊達は大陸を延々横断して、はるかなるカリフォルニアのロサンゼルスまで逃げ出したのでした。大陸横断鉄道はもうあったのではないかと思いますが、情報の流れも人の流れもまだまだ時間がかかっていた時代のこと、さすがにカリフォルニアまではいやがらせはやってこなかったようです。
そして、時代が下って、ニュージャージーとカリフォルニアが簡単に行き来できるくらいの頃には、エジソンの特許は占有期間が切れていました。かくして、海賊達ははるか西の新天地で、新しい産業を興したのでした。
ちゃんちゃん。
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2005年12月03日
オスカーの季節、「Walk The Line」の匂い
そろそろオスカー候補の予想がいろいろ語られる季節になりました。地元紙サンフランシスコ・クロニクルや「エンターテイメント」誌によると、今年も女優が不作とのことで、その中で例外的に皆が筆頭候補として名前を挙げるのが、「Walk The Line」の主演女優リース・ウィザースプーンです。
本来の主役、ホアキン・フェニックスというのも私の好きな役者だし、前評判も割りによいので、見てきました。「Walk The Line」。
お話は、カントリー歌手、ジョニー・キャッシュの半生記。最近愛用している、ビデオ・ポッドキャストの映画評では、お話はそこそこで、主演二人の演技が見物、ということでしたが、全くそのとおりでした。
大成功した歌手が、その栄光の中で身を持ち崩し、ヤク中でどん底に落ち、そこから苦しみながらはい上がる・・というお話は、もうVH-1(ミュージック・ビデオ・チャンネル)で何度も見たので、「あぁまたこれね、どうせならジョニー・キャッシュじゃなくてクラプトンでやってよ」という感じ。
でも、画面からなんだか、匂いがするような感じなのです。「男の匂い」といったらいいのかな・・・なんか、腐敗した、クサーい、作中のああいう男達が発する匂いが、「見える」ような気がするのです。これが、ホアキン・フェニックスの演技なのでしょうか。
その中で、リース・ウィザースプーンが登場すると、急に華やぎます。お話がジョニーを中心にしているので、彼女演ずるジューン・カーターの方は、本当は彼女もいろいろ背負っているんだろうけど、やや背景が薄まっていて、そこは省いて、華の部分だけを役割としているようです。
それで、両者ともに当然、楽器を演奏しながら歌うのですが、「歌はやっぱり吹き替えてるんだろうな~、上手すぎるよな~・・」と思って最後のクレジットを見ていたら、なんと両方とも自分で歌ったのだそうです。ジョニーのギターもど素人から練習したと聞きましたが、まぁフェニックスのほうは、もともとそれほど歌唱力があるというより、けだるいブルースですし、ギターも比較的単純なコードだけなのでまだ驚きません。でも、ウィザースプーンの歌はすごかった!本当に、カントリーの女性歌手の「コブシ」をコロコロやる歌い方で、うまいのです。
いやぁ、さすが俳優さんって、プロだけあって、すごいなー、とまたヘンなところに感心しました。
オスカーの季節、「Walk The Line」の匂い on アメリカ映画 : 11:50 | コメント (0) | トラックバック
2005年12月01日
ジェット・リーがかっこいい!(10年前ですが)
このところ新作映画を見に行く暇がなくて、こんな話ばっかで恐縮ですが・・・
ジェット・リーの10年前の傑作、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ(1~3)」を3本、立て続けに見てしまいました。これはスゴイ!!ぐゎー、すごい!正直、あまり期待せずに見たのですが、すごすぎ、面白すぎ、立て続けに見てしまいました。
なにがって、とにかくジェット・リーがかっこいいのよ!こんなにかっこいいって知らなかった。彼の出ているものは「Hero」を見ましたが、「グリーン・デスティニー」や「カンフー・ハッスル」なども含め、最近の中国映画の武芸大作って、人が飛びすぎて、逆に格闘場面の迫力がいまいち、のような気がするのです。Heroも、武芸よりも画面の美しさ、ジェット・リーよりもトニー・レオンのほうが印象に残っています。
でも、この映画では、ワイヤーはもちろん使っていますが、ジェット・リーのワザを見せるための「脇役」に徹しています。延々と格闘場面が続くのですが、そのスピードと迫力にポカンと口あけて見続けてしまいます。
IMDbで調べると、このシリーズは他にあと3本あるのですが、この最初の3本がやはりいいらしいです。(他は監督と主役が違う)カンフーとストーリーとユーモアの絶妙なバランスがポイントだと思うのです。
いずれも、清朝末期の中国が舞台で、外国勢力と国内の種々の勢力の間でのせめぎあいを題材にしていて、ジェット・リー演じるウォン・フェイフォンというのも、実在の人物だそうです。最初の「天地黎明」は、外国人と、そいつらと結託した中国人マフィアがワルモノ、それをやっつける我らがヒーロー、というよくありがちなパターンなのですが、それでも単に外国人というだけじゃなくて、中国人をだましてアメリカに連れて行き、金鉱掘りの奴隷労働をさせるという、それなりに時代背景をもった説得力のあるワル達。で、このワンパターンが続くのかと思うと、第二作の「天地大乱」(この3つの中でも最高だと思う)は、今度はイギリス人はいい人の役回りで、孫文が登場します。第三作「天地争覇」では、西皇太后と李鴻章も登場、ロシアと日本の中国での勢力争いなども背景になっています。ワルモノもいい役も、単純じゃなくて、多面的なところがGood。
そんな中、ウォンは相手が何十人いようが、弾丸や斧ががんがん飛んでこようが、絶対に当たらず、超人的にみんなやっつけてしまう。リアリティなんぞ、この際どうでもよいのです。ウォンがかっこよければ、いいのです。見ていてスカッとする爽快さ。これぞカンフー映画!
そして、ウォンの親戚で恋人でもあるイーさんとのカラミも、ストーリーというより、ジェット・リーのかっこよさを引き立てるためのスパイスですね、これは。効果的です。お笑い担当の弟子もなかなかいい味出してます。
それにしても、武芸の達人って、やっぱり立ち姿がキレイですねぇ~。腰を落としたときの安定感と凄みも、やっぱりホンモノです。どうも私、そういうのにヨワいようです。
ジェット・リーがかっこいい!(10年前ですが) on アジア映画 : 05:26 | コメント (0) | トラックバック


