2006年01月01日
「Brokeback Mountain」 大自然の中の強烈なる孤独
★★★★★[100点](0-100点)
日本ではもう元日ですね。あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。当地ではちなみに、今日本語チャンネルで「紅白」をやっています。
子供がずっと家にいるので、なかなか劇場まで映画を見に行く機会がなく、しばらく新作の話がなくてすみませんでした。ようやく時間ができたので、やはり一番評判のいいものを見よう、ということで「ブロークバック・マウンテン Brokeback Mountain」を昨夜見ました。ベネチアで大賞を取り、ゴールデングローブでも一番多くのノミネートを得ており、批評家の評判もよかったのですが、少し前まで70スクリーンぐらいの限定公開だったので、こりゃーサンフランシスコまで遠征しないとダメかな、と思っていたら、ボックスオフィスで大健闘した結果か、近くのシネコンでもやっていました。やったー!
前評判どおり、すばらしい映画でした。1960年代のワイオミング、夏の間、山で羊の番をするカウボーイ二人が禁断の恋を育む。その後二人は遠く別れてそれぞれに結婚し、社会に溶け込んでいくように見えたが、4年後に再会。そこから、二人の「普通の生活」の歯車が少しずつ狂いだしていく・・・
おそらく、アメリカ人としての文化や心情の基盤が育ってくる過程のどこかに、この美しくも強烈な、ワイオミングの大自然と、西の辺境の「孤独感」というのが作用しているのではないかと思います。彼らにとっての、心の原風景がここにあるような気がします。アメリカ人でなくても、この孤独感、寂寥感、「結局人は一人で生まれて一人で死んでいく」ということを痛いほどつきつけられることはあります。周囲の人間も含め、誰も悪いことをしようと思っているわけではないのに、どうしようもない周囲の制約と、心の底から湧き出るどうしようもないほどの愛の奔流に流され、痛みをかかえながら生きていかざるを得なくなる・・しかし、この主役の無口なカウボーイ、エニス・デルマーのこの強烈なる孤独との「折り合いのつけ方」というのは、アメリカの辺境的なんだろうな・・・と思いました。日本の映画のように、涙がバンバン出る感じではないのです。無人の荒野を風が吹き抜けるように、心を風が吹き抜けていく・・そんな感じなのです。(ちなみに、監督はアメリカ人じゃなくて、アン・リーですが。)
主役二人(ヒース・レッジャーとジェイク・ギレンハール)の演技はすごいです。カウボーイ英語が全く聞き取れず、ただでさえ無口なエニス(レッジャー)がぽつんぽつんと話す身の上話が、私にはほとんど謎解きのようでしたが、これも含めて、悲哀を帯びた表情も、年月を経て変化していく様子も、ものすごいリアルです。演技だけでなく、場面の作り方もリアル。たとえば、「たそがれ清兵衛」を見て、「あーそうか、武士って実は公務員だったんだ!」と気がついて急にその実在感が増すのと同じように、この映画の前半部では「あーそうか、カウボーイってのは、実は農家だったんだ!」というリアリズムで彼らが身近に感じられるようになります。何百頭という羊を追い、怪我をした羊の手当てをし、牛にえさをやる。そんなディテールと人っ子一人いない大自然の中の圧倒的な美しさが印象的です。
エニスのほうの視点で主に描かれていますが、相手のジャック・トゥイスト役ギレンハールのかっこよさも大注目です。彼のほうがゲイ指向がもともと強いという役回りで、登場いきなりのっけから「うわぁ、こんなアブない色気丸出しでいいのぉ~~!?」でございました。オバサンには刺激が強すぎました。ハイ。
ゲイのカウボーイの映画、というまとめ方をしてしまうと、だいぶ誤解を招く映画ですが、なんといってもゲイに対して寛容なサンフランシスコのこと、当地ではヒットしても不思議はありません。ただ、映画の舞台になった、保守的な真ん中へんは、どう受け取るのでしょうか?
いずれにしても、私的には、今年見たアメリカ映画の中では一番、といってよい映画でした。
Posted by Michi Kaifu on 2006/01/03 with 映画生活
「Brokeback Mountain」 大自然の中の強烈なる孤独 on アメリカ映画 : 2006年01月01日 09:39
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コメント
私もきのうPalo Altoで観てきました。カウボーイ英語の聞き取りが本当に大変でしたが、それがまたリアリティを持たせていていい味出してました。しかしAng Leeというガイジンの監督による、哀愁漂うアメリカ描写には脱帽。
投稿者 Zak : 2006年01月03日 15:19
わ、Palo Altoですか、近くですね。私はRedwood Cityで見ました。この映画をガイジンが作ったというのは驚き、同感です。
投稿者 Michi : 2006年01月03日 18:20
はじめまして。
数ヶ月前まで日本の映画会社に勤務してましたが、夫の会社の都合で現在テネシー州ナッシュビル在住です。
立派な邦画のホームページを運営されていて驚きました。
ゴールデングローブを取ったのと、このブログを見て、今日見に行きました。ゲイのセックスシーンはワイオミングの圧倒的な自然の美しさの中ででは、子馬がじゃれ合っているかのようで、あまり抵抗感を感じませんでした。むしろ温かい気持ちになるぐらい。私たちって哺乳類なんだなあ、って。
賞をとったばかりだったので、ここナッシュビルも日曜の午後ですがそこそこの入りでしたよ。
投稿者 けいたん : 2006年01月23日 10:18
けいたんさま、
コメントありがとうございます。ナッシュビルですか!馬がいる風景など、そちらでは身近に感じられたのでは?映画会社のご経験おありとはすごい!またいろいろ教えてくださいね。
投稿者 Michi : 2006年01月26日 12:00
こんにちは、初めまして。
本日、brokeback mountain見てまいりました。
あとからじんわり効いてくる映画ですね。
この映画の情報を集めている際にこちらのサイトを見つけました。
私の感じた思いをそれ以上に言い得たこちらの感想文、とても素晴しいと思いました。
つきましてはミクシイ内からこちらにリンクをはらせていただきたいのですが、もし、ご迷惑であればすぐ外しますのでご面倒でもご連絡いただけたらと思います。
どうぞよろしくおねがいいたします。
投稿者 KDM : 2006年01月30日 15:58
KDM様、
どうぞ、私の雑文などでよろしければ、ご自由にリンクなさってください。コメントをありがとうございました。
投稿者 Michi : 2006年01月30日 16:09
Michiさま、リンクの件どうもありがとうございました。
みてから、約一週間なのですが、
じんわりと効いてくる映画ですね。
忘られない映画です。
また見にいこうかな??
投稿者 KDM : 2006年02月04日 05:39



