ジャンクションより 
ネットとシネマ、日本とアメリカの合流点から映画を語る
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2006年5月27日
「ダ・ヴィンチ・コード」大長編小説の映画化の難しさとアメリカの「悪評」
アメリカでは散々な批評を浴びまくっている「ダ・ヴィンチ」ですが、やはり話題作ですし、原作を読んで楽しみにしていたので、見に行ってきました。
悪評は、やたらに話題が派手で期待が高かった分、落差が大きかったことも原因かと思いますが、普通の映画だと思えばそれほど悪くはないと思いました。ただ、確かに、分量が多くて中身の濃い原作を映画にすることの難しさが如実に出てしまった、という感じがしました。
あの原作をきちんと映画にしようとしたら膨大な分量になってしまうので、カーチェイスだの飛行機で逃げ回るだの、いかにも「ハリウッド映画っぽい」場面を中心にして、記号論と歴史の暗闇の謎解き部分は、登場人物の会話に詰め込まざるを得ない、そのためにやたら簡単に謎が解けてしまうし、その謎にまつわる背後の深みのようなものが描けない、ということになります。
かといって、あまりに複雑な背景があるので、会話部分やフラッシュバックだけでは、原作を読んでいない人には結局なんだかよくわからない。一緒に見に行った夫は原作を読んでいなかったので、帰りの車の中で質問攻めにあいました。
それでも、俳優の演技がよいとか、独特の雰囲気があるとか、別の味わいがあればいいのですが、主人公二人は前評判どおり、薄味な感じでしたし(イアン・マッケランはよかった)、ほの暗い歴史と宗教の暗部の雰囲気が、そういうわけで端折られてしまって、「なーんだ、やっぱりハリウッドはカーチェイスか・・」という残念さが残ります。
昨年夏の日本映画、「亡国のイージス」でも、原作を読んでいない人にはわかりにくい、原作を読んだ人には物足りない、という批評がずいぶんあったのを思い出しました。しかし、そうはいってもどちらも興行的にはヒットしているので、よいのでしょう。
ちなみに、アメリカではカトリックを悪者のように描いているために批判が強くいまひとつの成績、という見方が日本ではあるようですが、映画評を読む限り、この点を指摘しているものはほとんどなく、いずれも上記のような、ストーリーのわかりにくさと主演二人の演技を問題にしています。確かに、シンプル化のために、カトリックの組織を原作以上に単純な悪者にしているように見えますが、それはあまり影響がないのではないかと思います。
「ダ・ヴィンチ・コード」大長編小説の映画化の難しさとアメリカの「悪評」 on アメリカ映画 : 07:38 | コメント (0) | トラックバック
2006年5月22日
「Over The Hedge」 子供アニメのくせに、不動産バブル時代の皮肉が利いたシャープな笑い
もちろん、ホントは「ダ・ヴィンチ・コード」を見たかったのですが、結局週末は息子とその友達を連れて、ドリームワークスの新作アニメ、「Over The Hedge」を見るはめになりました。
最近、やたらと動物のCGアニメが多い中、この作品は前評判が高かっただけあって、子供のお供で仕方なくチケット代を払う大人にもサービス満点です。メインの主人公だけでなく、動物たち皆のキャラがそれぞれに際立ち、それぞれが動物たちの策略や予期せぬ事態の打開策の中で、それぞれに役割を担っていくというキメ細かいプロット、そして極めつけ「悪役」キャラが不動産屋の女性というのが、最近のアメリカの状況をするどく皮肉っていて、大笑いしてしまいました。
アメリカはここ数年、景気はあまりよくないのに不動産だけが上がり続けるという、不動産バブルが続いています。バブルに乗って山林を切り開き、最近流行のスタイルの住宅が次々と建てられ「サバービア」(郊外)となっていく風景。それをがんがん売りまくる妙に派手ないでたちのハイパワー女性不動産屋。動物の被害で家の値段が下がってしまうことをやたら気にする住民たち。こんな物語の背景は、ピカピカで高価な住宅に手が出なくなってしまった多くのアメリカ人には身近な話題であり、かく言う私も、こうした風潮に動物たちが逆襲するお話に思わず快哉を叫びたくなってしまいました。
もちろん、どんどん進化するCGIは相変わらずすごく、動物たちのつややかな毛並みがキレイです。それに、ブルース・ウィリス、ニック・ノルティ、アヴリル・ラヴィーンや、あの「サイドウェイズ」のトーマス・ヘイドン・チャーチなど、有名人いっぱいの声の出演も楽しく、大人の私の目から見ると、「インクレディブルズ」や「チキン・リトル」などの最近の人気CGアニメと比べても、一番と言えるぐらいの面白さでした。そして子供たちには、かわいらしい動物のキャラや、大げさに衝突したり爆発したり、地球の回転が止まったりするお笑い表現などに加え、ヒップホップ調のオネエ・スカンク、ゲームに熱中するハリネズミの子供たちの活躍など、今風の身近さとシャープさがウケていたようです。
子供たちの見ているこうしたアニメ映画やテレビ番組を見ていて、宮崎駿の「ハウルの動く城」が昨年アメリカではあまり受けなかったのが、仕方ないかな、と思えてしまいます。アンデルセン童話的な、白人だけが登場するヨーロッパ的なメルヘンの世界というのは、今のアメリカ人の子供や若者には、共感もあこがれも得られないのではないかという気がします。ジブリ次回作、宮崎吾朗の「ゲド戦記」も、私の見ている英語メディアでは、「白人ばかりのヨーロッパ仕立てで新味がない」という評を見かけます。日本ではまだまだそういった世界を憧れをもって見るのだと思いますが、アメリカのマーケットの好みとずれてきてしまっているような、そんな気がして、心配です。
「Over The Hedge」 子供アニメのくせに、不動産バブル時代の皮肉が利いたシャープな笑い on アメリカ映画 : 12:45 | コメント (0) | トラックバック
2006年5月12日
「クラッシュ」あまりにアグリーで透明な現実の刃
お久しぶりです。なかなか、映画見に行くヒマがありません。それで、もう日本でもとっくに公開されたし、アカデミー賞の話題もはるか彼方の話なのだけれど、ようやくDVDで見られた「クラッシュ」、やや予想外の映画でもあり、ちょっと感想を書いてみます。
5月5日は、日本では子供の日ですが、当地では「シンコ・デ・マヨ」(スペイン語で「5月5日」)という、メキシコの独立記念日にあたり、これを一部の人々は祝います。そのちょっと前に全米各地で、ヒスパニック系を中心とする不法移民達が一斉に職場放棄して、ブッシュ政権の不法移民取り締まりの強化に反対するデモを行いました。「911」(同時多発テロ)以来、マイノリティや移民に対するアメリカの空気は、どんどん厳しくなっています。アメリカの中でも、私の住むカリフォルニアは、外国生まれの移民が数も多く、ハイテク産業から農業や家内労働まで、いろいろな分野で生活を支えています。そのため、マイノリティやその人たちと直接接するマジョリティの白人も、逃げようにも逃げられないお互いの関係に、フラストレーションがたまっているように思います。
特に、この映画の舞台となったロサンゼルスは、その関係が一番厳しい土地だと思います。「クラッシュ」では、ロスの一角で、白人の政治家とその妻、黒人の刑事とヒスパニックのガールフレンド、黒人の若者、イラン系家族、裕福な黒人夫婦と労働者の家族、中国系の男、などいろいろなエスニックの人々が、どこかで関連しながら小さな事件、大きな事件を起こしていきます。誰が主役かわからない群像劇で、おとぎ話のような数多くのエピソードが次々と重なっていきます。
その中で登場人物達は、普段皆が腹の中のどこかで思っていても口にできない差別的なことを、堂々と言い放ちます。あまりにアグリーですが、「あー、でもそういうこと、あるよな」、「あー、こういうこと言いそうなやつ、いるよな」とどこかで共感するリアリティがあります。ここまではっきり言っちゃうとかえってスッキリする、かえって笑えてしまう、ような快感と言ってもいいかもしれません。
その一方で、お話は予想外の展開が次々と起こり、悪いヤツに見えていたヤツが実はそうでもなかったり、その逆だったり。この人とこの人はどこでどうつながるのか。あらゆる悪いものが一斉に飛び出した後に、一匹の「希望」が最後に残る、パンドラの箱かとほのぼのすると、今度はどーんと落とされます。事件の起こる時間や場所や人物が次々と変わっていく割りに、ごちゃごちゃにならず、引っ張り込まれるのは、ストーリーの面白さと、印象の強い登場人物達を演ずる、俳優さんたちの力ではないかと思います。
特に、「いい子チャン」役が多い印象のあるサンドラ・ブロックが、いかにも上流の白人女性にありそーなイヤーな女をガンガン演じているのが新鮮です。「ホテル・ルワンダ」のドン・チードルなど、他の役者さんも、みな熱演です。
このところ、「いい映画」と言われる映画は、いいのだけど私には見ていて苦しいものが多く、これもその一つかと思っていましたが、しゃれた音楽や画面のつくりも手伝って、意外に突き抜けたような軽さと透明感があります。かさにかかってマイノリティを圧迫する、最近の右傾化したアメリカのマジョリティに「どぉだー!」と「現実」という刃をつきつけているような、そんな快哉の感覚が残る映画でした。
なお、今回の「いい男」収穫は、黒人音楽プロデューサー役のテレンス・ハワードですねっ!品があって優しげで、複雑な思いを表現した表情の演技がすばらしかったです。
「クラッシュ」あまりにアグリーで透明な現実の刃 on アメリカ映画 : 14:38 | コメント (0) | トラックバック


