ジャンクションより 
ネットとシネマ、日本とアメリカの合流点から映画を語る
« 2006年10月 | メイン | 2006年12月 »
2006年11月20日
「Happy Feet」踊りださずにはいられない、荒唐無稽なペンギン・ファンタジー
ニューヨークのクリスマス・シーズンの風物詩の一つに、ラジオ・シティ・ミュージックホールのクリスマス劇があります。子供向けの定番ショーではあるのですが、さすがエンターテイメントでは世界最高峰のニューヨーク、踊りも歌もすばらしく、それにも増して、後半のキリスト生誕劇ではホンモノのラクダや羊が舞台に登場し、ものすごく大げさでドラマチックなショーアップをしているのが印象的です。日本から観光に来てこのショーを見た友人は、終わったあとあんぐり口をあけたまま凍っていたのを覚えています。
今週末から全米公開になった、子供向けCGアニメの「Happy Feet」を見て、このときのことをつい思い出してしまいました。予告編で、スペイン語なまりの「マイウェイ」を歌いながら踊るかわいいペンギンたちを見て、楽しそうな映画ではあるけれど、最近やたら多い動物もののドタバタCGアニメの一つか、と思っていたら、どっこい・・・
この皇帝ペンギンの世界では、歌が上手であることがペンギンの価値を決めるのですが、主人公マンブルは、生まれつき歌が下手で、仲間につまはじきにされます。歌は下手だけれど、タップは大好きなマンブル、隣町のハッピーなスペイン語なまりの仲間たちに元気づけられ、人間が捨てたゴミが首にからまって苦しむ友達を助けるために、冒険の旅に出ます。
結局、マンブルが最後には歌が歌えるようになって、仲直りしてみんなで楽しく踊って終わり・・かと思いきや、意外で壮大な結末が用意されています。オチは荒唐無稽ですが、だいたいペンギンが歌って踊るファンタジーの世界なんだから、もう何でもあり。シリアスというべきか、子供たちに何かを教えようとしているのか、なんと言うべきかわかりませんが、すごい結末です。
最近の子供向けCGアニメ長編では、昔のいわゆるマンガ的キャラでなく、リアルな動物の毛並みや羽毛、体の動きなどを写し取り、それを生かして面白く動かすというのが主流ですが、これもなかなかうまくリアルと虚構を組み合わせていて、「森のリトルギャング」などよりももっとリアルです。また、アメリカの豊かなミュージカルの伝統を受け継ぐ歌と踊りの場面を生かすのも、最近よくある手法ですが、この映画では例えば「チキン・リトル」や「ロボット」と比べても、質・量ともによくできていて、盛り上がる場面では、子供たちは思わず一緒に踊っていました。ちなみに、この映画を作っている人たちは、私と同年代なんだろうな・・と思わせる選曲もなんとも言えず、クイーン、アース・ウィンド・アンド・ファイア、スティービー・ワンダーとか・・・あ、これって親対策か!?
「カーズ」でも思いましたが、自分たちのCG技術を「こんなことできるんだぞ、どぉだぁー!」と言わんばかりの壮大なCGの場面は、ここでも健在。宇宙から南極へとズームインするオープニング、アザラシやシャチとの水中追跡、目が回るほどのペンギンの大群が踊る場面、南極の地吹雪や暗い空から光がさしてくる場面など、実写でもテレビでも決してできないスケール感が満載。
主人公のペンギンの顔が、声をやっているイライジャ・ウッドに似せてあるのもかわいいし、最近本人が出るより声の出演のほうが面白いロビン・ウィリアムズのメキシカン風ペンギンも最高です。
マジメっぽいテーマも感じさせるストーリーではありますが、どこまでそれをマジメに取るべきなのかそれともこれはよくできた皮肉なのか・・・思わず悩みそうになりますが、たぶんそんなこと悩まずに、子供たちと一緒に踊るのがいいんでしょうね。予想外に面白い子供映画でした。
「Happy Feet」踊りださずにはいられない、荒唐無稽なペンギン・ファンタジー on アメリカ映画 : 08:24 | コメント (0) | トラックバック
2006年11月09日
「バベル」届かない言葉、甦る絆
菊池凛子さん@ロサンゼルス
このところ、「日本語ブログ界のスティーブ・ジョブス」(シリコンバレーとハリウッドを両方カバーする、ってだけです・・)を目指しているのですが、根がハイテクおたくの私にはその道はなかなか厳しいのが現実・・・
と言いつつ、先週の週末から今日まで、ロサンゼルスで開催されている「American Film Market (AFM)」を取材してきました。国際的な映画の見本市で、アメリカだけでなく世界各国から、数多くの映画が出品され、バイヤーと販売交渉をする場です。
こちらの話は、後ほど英語の記事で詳しく書きますが、そのついでに、昨夜はロスのUSジャパン・ソサエティという非営利団体主催の「バベル」上映会があり、出かけてきました。ブラッド・ピットとケイト・ブランシェットが主演、日本編には役所広司さんも出ているのですが、今年のカンヌ映画祭に出展されたということで、私的にはニガテな、難し~い芸術映画ではないかと恐れおののいておりました。(たしか先週末からアメリカでの一般公開も始まっています。)
上映前にちょっとしたレセプションがあり、そこにはなんと、東京編の主役ともいえる菊池凛子さんがいらしていました!すらりと背が高く、華やかな日本人離れした大人っぽい顔に見えたのですが、なんと映画の中では、モロに日本の女子高校生、しかも聾唖という役柄で、言われなければこの人とはとても思えませんでした。いやー、役者さんって、すごいですね!
映画は、モロッコ、アメリカとメキシコの国境、それに東京という、3大陸のはるか離れた土地で、一台のライフル銃が次々と引き起こす悲劇を描いています。菊池さんはご挨拶の中で、「コミュニケーションができないことを描いている」と仰っていましたが、確かに主なテーマは、「届かない言葉、伝えたくても伝わらない悲しさ」ということのように思いました。言葉の通じない異国、というだけでなく、夫婦や親子の間で気持ちが通じていなかったり、権力をもつ立場の人にいくら言ってもわかってもらえなかったり、耳が聞こえず話ができない女の子の悲痛なフラストレーションだったり、といったいろいろな「ミスコミュニケーション」が出てきます。
悲しくつらい出来事がつぎつぎ起こるのですが、そんな中でわずかに残った希望の絆が甦っていく。「バベル」というのは、旧約聖書の中で、神に届くほどの高い塔を建てようとした人々が、神の怒りに触れてお互いに言葉が通じなくなってしまう、というお話の中の塔の名前ですが、あらゆる悪いものが出てしまったあとに、最後に希望が残った、ギリシア神話の「パンドラの箱」のようでもあります。
その場で見た人何人かと話しましたが、東京編の描写は、外国人の監督が撮った日本としては、おそらくベストといえると思いました。偏らず、とても自然な東京と日本人だったと思います。それぞれの場面にあった音楽が流れますが、最後の印象的な東京の場面は坂本龍一さんの物悲しいピアノ曲。陳腐な東洋風の音楽でなく、あの曲を使ってくれたのも嬉しかったです。意外な場面の展開、役者さんたちの演技も含め、美しい映画でした。
菊池凛子さんの演技も、すばらしかったと思います。今、英語も勉強中とか。是非、世界で活躍していただきたいと思います。
「バベル」届かない言葉、甦る絆 on アメリカ映画 : 15:40 | コメント (0) | トラックバック


