2007年08月20日
「The Slanted Screen」 アジア系男性のハリウッド苦難の歴史
このところ、真田広之さんや渡辺謙さんなどが海外で活躍されるようになって、楽しみですね。しかし、実際のところ、ハリウッド映画やアメリカのテレビでは、これまでずっと、アジア系、特に男性は全く存在感がありませんでした。映画ライターのはせがわいずみさんからも、「ハリウッドでアジア系の仕事がない」とも聞いていましたし、「ラストサムライ」に「沈黙の侍」として出演された福本清三さんの本にもそのことが書かれていました。
そのあたりの実態は?・・・と思っていたところ、日系米国人の友人から、このドキュメンタリー、「The Slanted Screen」(傾いたスクリーン)を勧められました。ジェフ・アダチという日系米国人の方が監督で、数少ない成功しているアジア系俳優や監督にインタビューし、その苦難の歴史を古い映画の場面などを織り込みながら解説しています。あまり気がつきませんでしたが、どうやらその「壁」は、女優よりも男優のほうがもっと高いようで、この作品では男優にフォーカスしています。
無声映画時代、早川雪舟は白人の女性を相手にラブシーンを演じたり、ラティーノやアメリカインディアンなどいろいろな役を演じました。また、戦後になり、ジェームズ・シゲタはハンサムな主人公の役をいくつも演じました。(シゲタさんはこのドキュメンタリーにも登場しますが、すでに年配になられた今でも、ハッと目をひかれるほどのダンディです!)しかし、長いハリウッドの歴史の中で、ロマンティック映画で主役を演じたアジア人男優はこの二人しかいませんでした。
このあと、映画やテレビでは、そもそもアジア人の役というのが全くなくなっていきます。たまにあっても、卑怯な悪役やカッコ悪い道化役で、しかもそれを白人がわざとらしく演じる時代が長く続き、「アジア人のステレオタイプ」が作り上げられました。
70年代にブルース・リーが登場し、今度は「カラテやカンフーのアクション」という役どころが、アジア人のステレオタイプに加わります。それでも、アジア人が「強い男」の主役を獲得できたということで、アジア系には一筋の光明となりました。
さらに最近では「オタク」「ガリ勉」というイメージもステレオタイプに加わり、アジア系には「人種のステレオタイプ」を強く出したタイプの役柄しか来ない、しかもその数は極めて少ない、という状況はまだまだ続いています。
成功の確率が少ないために、俳優を目指すアジア系男性がそもそも少なく、また目指すべきロールモデルがないために途中で挫折することも多くなります。また、監督、脚本家、プロデューサー、映画会社の幹部といった、「作る」側にもアジア系が入り込めず、そのためにアジア系が自然に存在するような脚本が作られない、という事情もあるそうです。
映画やテレビは、一般の人々への影響力が大変強いのは、アメリカも日本も同じ。その中でアジア系のイメージが低いことは、アメリカに住むアジア系の子供たちの自己評価が低くなったり、マジョリティのアメリカ人が、アジアの人や国に対して偏見を持つことにつながってしまいます。このため、アジア系の映画人たちは、新人制作者や俳優のための学校を作ったり、自分たちの手で作った映画を上映する映画祭を催すなど、団結して努力を続けています。
タフな悪役を演ずることの多いケリー・ヒロユキ・タガワ氏が、インタビューの中でこんなことを語っておられます。「私が悪役をやることで、アジア系のイメージが悪くなると言って非難する人がいる。でも、アジア人に来る役は、弱虫のビジネスマンかタフな悪役しかない。それなら、弱虫よりもタフな悪役のほうがいい。それでも演じる役がある限り、自分はできる限りやる。状況が悪いのはわかっているが、『なんとしてでもやりぬく』とつい思ってしまう。これは日本人としての自分のDNAかもしれない。ほら、日本では受験生がそういうことを書いた鉢巻をして頑張るでしょ。」
ここから先は私の感想ですが、そんな中で、ここ数年「ラストサムライ」や「SAYURI」など、登場人物はほとんどがアジア人でそれを演ずるのもアジア人、ラブシーンもあるし種々のキャラクターが登場する、といった映画が多額の予算で作られるようになったのは、それだけでもすごいことだと思います。それは、こうした地道な努力が実ったというより、日本や中国などアジア諸国がハリウッド映画の「お客さん」として存在が大きくなってきたから、というのが現実でしょう。それでも、状況は少しですが良くなってきているように思いますし、それがアジア人に対する「違和感」や「偏見」の解消につながるのは、すばらしいことだと思います。
地道に頑張ってきた日系米人の俳優さんたちにとっては、日本のトップスターがひゅーっと飛んできて主役や準主役をさらっていくことに対して、どんな思いでおられるか・・・ということもちょっと考えてしまいます。「それが状況の改善に役立つなら・・」と思っていただけているのでしょうか。
一方で、受け入れるアメリカの映画やテレビの業界人にとって、日系米人か日本人かの区別はあまりなく、たとえ日本のトップスターでもまだまだ壁が厚いことは同じです。上記2作も、「硫黄島からの手紙」にしても、皆「日本が舞台」のお話。例えば、韓国系女優サンドラ・オーが映画「サイドウェイズ」で、別にアジア人である必要はない単なる「セクシーなシングル・マザー」を演じたような、そんな「自然」な役回りというわけにはいかないのが現実です。
先日、読売の記事に「ハリウッドで日系俳優が不足して困っている」という記事がありましたが、今はちょうど、そういった「過渡期」にある、ということなのでしょうね。そんな中、ハリウッドで努力を続けておられる日本の俳優さんたちを、ファンとして引き続き応援していきたいと思います!
「The Slanted Screen」 アジア系男性のハリウッド苦難の歴史 on アメリカ映画 : 04:50 | コメント (0) | トラックバック
2007年08月13日
「ラッシュアワー3」 大笑いの影に「兄弟」アリ
真田広之さんが悪役で出演する、ということで話題になっている、ジャッキーチェン・クリスタッカーの最新作「ラッシュアワー3」。事前の映画評論家の批評はさんざんでしたが、オープン直後の興行成績は上々で週末トップは間違いなしとか。初日の勢いが少々衰えていて、前作「2」には及ばない成績だそうですが、十分期待どおりのヒットだったのではないでしょうか。ちなみに、種々の映画サイトでファンの評価は上々です。
私も初日金曜日に見てきました。ここでも以前書きましたが、私は真田さんのファンなのでついついその目で見てしまいます。ここにはあえてその視点で見た映画の感想を書きますので、客観的な評論は、本職の評論家の方のものを読んでくださいね。
一言で言うと、「真田さんの多面的な魅力を全部引き出してくれて、ブレット・ラトナーさん、ありがとう!」ということですね。軽い身のこなしでの久々のアクション全開もさることながら、単純な悪役じゃない、悲しい面をも表現する演技力、セクシーな表情と声。なんせ、今売り出し中ですから、これだけ全部の機能をきっちりデモしてくれるのは本当に嬉しいことです。(予告編ではあまり真田さんが出てきませんが、これは多分撮影スケジュールの関係で、真田さんの出演場面が予告編制作に間に合わなかったせいでは?と思われます。出番、多いです。)
映画全体としては、前作よりももっと「お笑い」要素が増えて、とにかく最初から最後まで大笑い(それもやや大人のジョーク多し)、オチでも観客から大拍手が出るオチがなかなかいい!そして、キーワードは「兄弟」ってことじゃないか、と思ったのでした。
予告編を見ても、日本でのジャッキーのインタビューでも、「兄弟」という言葉がよく出てきます。主演二人も、アメリカでのインタビューの中で、「第一作ではふたりは他人、第二作では友達、そしてこの第三作で兄弟になったんだ」と語っていますし、真田さん演ずるケンジも、ジャッキー演ずるリー刑事と兄弟同然に育った仲。ケンジの言う「兄弟」のセリフには、二人の孤独と悲しみが透けて見えて、とても印象に残っています。(満員の映画館の笑いの渦の中、こんなこと考えたのは私だけだったと思いますが・・・映画は自分の好きなように見ればいいんですよねっ!)
真田さんは、ここしばらく、ジェームズ・アイボリー監督など、公開規模の小さいアート系の作品が続いてきたために、多くの人が見る映画には目立つ役で出ていなかったのですが、これでたくさんの人に知られることでしょう。嬉しいことです!
さて、この兄弟たちの運命は??ということで、皆様、日本で公開されたら楽しんでくださいね。
「ラッシュアワー3」 大笑いの影に「兄弟」アリ on アメリカ映画 : 12:27 | コメント (0) | トラックバック


