ジャンクションより 
ネットとシネマ、日本とアメリカの合流点から映画を語る
2007年2月23日
映画宣伝2.0
最近はすっかり、Web2.0という用語が、日本の普通のビジネスマンの間でも知られるようになってきました。従来のような、提供側が一方的に情報やコンテンツを用意してユーザーに配信する、という形態でなく、ユーザー自身の創作コンテンツをアップロードしたりそれらを相互につなげたり関連づけたりするスタイルのことです。グーグルや、映像共有サイトのユーチューブ、日本のmixiなどもこの範疇にはいります。この流れの中でも、最初の頃のテキストだけから、写真・音楽・動画といろいろな種類のコンテンツに動きが広がっています。
映画のオンライン配信は、特にアメリカではかなり進んできましたが、巨大な映像ファイルを扱うために、たとえユーザー側の回線がブロードバンドになってもまだまだダウンロードに時間がかかり、広く普及するのはまだ先だろうと思っています。しかし、映画を宣伝する手法として、Web2.0的な方法が日進月歩で進んでいるようで、このところ興味深く見ています。
公開のはるか前の時期から、オフィシャルブログを設けて製作スタッフがファンと交流するというやり方は、すでに広く行われています。同じ映画のファン同士の交流だけでなく、普通は遠い世界にいる映画製作スタッフが身近に感じられるのは、なかなか楽しいものです。
最近ではさらに一歩進んで、配給会社のほうからファンサイト運営者を探し出して積極的に働きかけたり、ファンサイトに貼り付けられる種々のツールを提供したりするようになっています。私は英語による日本映画・俳優情報サイトを運営しているために、時々アメリカの配給会社やその手先から、日本の俳優さんが出演する映画に関して時々連絡をもらい、場合によってはこちらから頼んでもいないのに、サイトに宣伝写真や情報を掲載するよう提供を受けることもあります。また、予告編の流れる「窓」をファンサイトに誰でも自由に貼り付けられるように、提供することも多くなっています。
私の運営するHoga Centralのトップページには、今「叫」のブログパーツ(この「窓」を組み込んだ小さいバナー)をくっつけてあります。また、真田広之さんの出演するイギリス映画「SUNSHINE 2057」では、もっと大きな本格的な予告編の窓を、でかでかと自分のサイトに貼り付けられるようになっています。もちろん、事前登録だとかサイトの審査だとかの面倒なことは不要。そういうのがないのが、Web2.0のスタイルです。
特に、この「SUNSHINE」の宣伝スタイルは、当初からとても先端的かつオタク的で、興味を持っています。ウェブサイトをぱっと見ただけでは、映画宣伝サイトとはちょっと思えません。「SUNSHINE」は、太陽の力が弱まってしまった未来の時代に、太陽を助けるための決死のミッションに赴く宇宙飛行士たちのお話です。このため、太陽や宇宙に関する科学的な話や、太陽に関する民族伝承など、かなり「太陽オタクっぽい」記事が満載されています。このサイトの運営者の方は、出演俳優のファンサイトやファンコミュニティで影響力を持つところに当初から積極的に連絡をとり、口コミで情報を広めたり、サイトのコンテンツに関する協力を得たりしています。最近は、公式サイトと連動して、「ファンフォーラム」や「ファンサイト」が立ち上がり、それらが各俳優の非公式ファンサイトと相互リンクしたり各種の協力を行っています。この映画は特に、国際色豊かなキャストのため、日本を含む世界中のファンサイトが相互に協力しており、それだけでもなんだかワクワクしてしまいます。
少し前は、マイナーなサイトは映画のスチル写真の提供も受けられず、映画会社の壁はかなり高かったと聞いています。今でも、大手の大作映画では同じだと思いますが、それほどの宣伝予算のない中小規模の映画なら、こうしたやり方のほうがずっと安価に、しかも効果的に興味のある人たちの間に情報が伝わり、ファン・コミュニティの強い支持を得ることができます。「窓」を貼り付けるやり方なら、窓の中味は映画会社側でコントロールすることもできるし、そういった技術の進歩のおかげでもありますね。
一方、私もやっているのでよくわかるのですが、ファンサイトやコミュニティサイトというのは全くのボランティアですので、ちゃんと長く続けるのは大変なものです。でも、こうして面白いパーツを提供してもらったり、製作側から連絡をもらったりすると、面白いし励みになります。相互に助け合う、新しいやり方がだんだんできているようで、これからもどんな新しいものが出てくるか、とっても楽しみです。
「SUNSHINE」英語世界公式サイト
「SUNSHINE」米国公式サイト(予告編窓のパーツが提供されています)
「SUNSHINE2057」日本公式サイト
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2006年1月26日
どんどん進むアメリカの「メディア融合」-ピクサーとディズニーの話
我が家の今朝のトップニュースはもちろん、「ディズニーがピクサーを買収」というお話。朝ごはんを食べながら亭主とその話をしていたら、小学3年の息子が「え?なんの話?」と聞くので、「ニモやインクレディブルズを作っているピクサーという会社を、ディズニーが買ったのよ」と説明してやったら、「それじゃぁ、ディズニーのアニメーションの技術がよくなる、ってことだね。」と即座に分析。「チキン・リトル」とピクサーの映画の技術レベルは、小学生にすらはっきりわかるぐらいの差がある、ということのようです。
ピクサーの創業者は、ご存知アップルCEOのスティーブ・ジョブス。この買収で、ジョブスはディズニーの筆頭株主で取締役会メンバーにもなりました。日本ではホリエモン騒ぎで、もともとマスコミ的で胡散臭い感じのあった「放送とネットの融合」が後退してしまいそうなのに比べ、アメリカでは新年になってからだけでも、ものすごい勢いで、いろいろな形で新しい潮流が顕在化しています。
引き金になったのは、去年秋の「ビデオiPod」の発売。アップルのiTunes Music Storeでテレビ番組が買える、という仕組み(ちなみにこのとき番組を提供したのがディズニーでもあった)で、この分野に興味を持ちながらぐずぐずしていたメディア・エスタブリッシュメントの御仁たちがこれで恐怖にかられました。
そして、正月明け早々にラスベガスで開催された、巨大な業界イベント「家電ショー(Consumer Electric Show)」。ここで、GoogleがCBSと提携して有料映像ソフト配信を始めるとか、Yahoo!が「どこでもYahoo」(TiVoとの提携、モバイル展開、などなど)とか、なにしろ動画配信関係に、コンテンツ側も積極的に動き始めた様子が、一気に噴出してきたのです。
アメリカでも、ハリウッドはこうした動きに対応するのは一番最後になるでしょう。一方、CBSなどの地上波テレビは、日本より一足先に、広告予算をネットにごっそり持っていかれるようになって、懐への打撃が深刻になりつつあり、座して死を待つよりは、先に動いたほうが勝ち、という状況になっています。
「ほら、私が言ったとおりでしょ。」昨年春頃から、「あと1年から2年の間に、アメリカではネットでのコンテンツ配信が急激に動き出して、ネット配信に適したようなタイプのコンテンツの需要が急激に増大する」と、クライアントに言い続けてきた私としては、予言的中で嬉しい限りです。日本の方の多くは、アメリカはブロードバンド後進国で、遅れててどうしようもない、と思われているでしょうが、そうではないのです。
さて、この「ネット配信に適したコンテンツ」の中に、「邦画」というのもはいる、と思っているのです。長くなるので細かい話は省きますが、今は経営学でいう「discontinuity」(不連続点)にあたり、何か新しいものを持ち込む絶好のチャンス、だと私は思っているのですが、日本の関係者の方々、いかがでしょうか?
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