2006年08月14日
これは僕の勇気の物語
折しもファンタジーを題材にしたアニメ映画が2本、
それも話題を集めて公開中です。
一見すると、どちらも剣と魔法の冒険活劇に見える
『ブレイブ・ストーリー』と『ゲド戦記』。
でも、その実、ふたを開けると内容は全く違うもの。
(ま、映画が違えばそりゃそうか…)
ということで、今回はその2作品を見て思ったことなどつらつらと。
そもそも、最初に神話があるわけです。
神話は人が「昔はこうだった。世界はこうできている」と考えて作った伝説で、
その純粋な神と人との伝説から着想を得て、
いわゆる「剣と魔法」のファンタジーが生まれます。
指輪物語やクトゥルーなど。
これを、遊びに使えないか、とRPGが生まれました。
私の中の認識ではそうです。
昔のRPGは先人が作ったファンタジーのルールに則って行われていました。
そこは純粋な異世界であり、
現実の世界の法則は一切合切通用しない。
魔法の国では、せいぜい蒸気機関がある程度でした。
しかし、テレビゲームの急激な発展に伴って、
RPGもバリエーションが増えました。
本来のrole playing gameという意味通り、
物語の登場人物を演じれば、それは全てRPG。
スペースオペラや戦国もの、未来や現代が舞台のものも多いです。
今の子供はそれらを総称してRPGと呼び、その世界をファンタジーと考えている気がします。
で、
前振りが長くなりましたが、2つの映画の話です。
これらの話の成り立ちは全く別物、という話でした。
『ゲド戦記』はファンタジーから着想を得たストーリー、
『ブレイブ・ストーリー』はRPGから着想を得たストーリーなんです。
つまり、則っているルールがそもそも違う。
そもそもゲーム好きの宮部みゆき原作ですから、
『ブレイブ・ストーリー』はいわずもがな、
最初からまるでゲームのような展開。
試練の洞窟を通って、称号を与えられて、アイテムを集めて、敵を倒す。
登場人物はそんな説明不足な設定に疑問も抱かず、
黙々とノルマをこなしてクリアを目指します。
いや、ゲームっぽい。
もちろん、文庫3冊分を2時間に収めるのだから、無理は承知とは言え、
あまりにご都合主義的な展開。途中の冒険は全てはしょってあります。
宮部みゆきはPSのゲーム「ICO」に感銘を受けて小説にしてしまうほどのゲーム好き。
そのため、『ブレイブ・ストーリー』は「RPGをやっている人」なら疑問を抱かない内容になっています。
でも、よく考えたらキ・キーマやネ族はほとんど同族が出てきませんし、
魔族=悪の勧善懲悪の構図もなんとも説明不足。
説明不足といってしまえば、世界の成り立ち自体が説明不足ですが…。
その点で『ゲド戦記』はしっかりと作り込まれています。
余分な部族を、まず作りません。
ファンタジーのルールに則って、できあがった世界の中で話を繰っているからです。
必要な要素は「魔法」が存在していること、竜と人が世界を別って暮らしているということ。
このルールの中に登場人物を当てはめて、話が展開しています。
ただ、問題はスタッフが「RPGで育った人」ということ。
つい、キャラクターにオリジナル部族を登場させてしまいます。
モブシーンなどはその極致。
その方が「見慣れたファンタジー」に見えるからでしょうか。
逆に地に足のついていない生き物が現れる画面は、非常にアンバランスです。
そして、『ゲド戦記』のさらなる問題は、
「宮崎アニメでなければならない」という幻想を制作スタッフが抱いてしまっている点でしょうか。
はっきり言って、クオリティはテレビアニメと同等かそれ以下。
宮崎駿監督作品、ひいては劇場作品のレベルには遠く及ばないクオリティになってしまっています。
特に目につくのは「動かないモブシーン」「宮崎キャラの感情の表現をマスターしていない」
「海・空を意味なく映す」という点でしょうか。
どれも宮崎アニメの魅力ですが、ここを宮崎吾郎監督が自分のものとしきっていないので、
逆にアラが目立ってしまいます。
風景はそれっぽい色をちりばめただけで書き込みが少ない
感情の表現は顔にしわを寄せるだけ、
特に目の表情が「ファンの書いた宮崎キャラ」のようになってしまっています。
さらに顔のデッサンが狂ったり、シーンによってタッチが違うなど、
(アレンが「寄生獣」の主人公に見えて…)
ちょっとつらいシーンが多かった…。
また、第1回監督作品というプレッシャーからか、
原案を宮崎駿の「シュナの旅」とし、
セリフやシチュエーション、登場キャラに宮崎駿の過去の作品を連想させるトピックをちりばめています。
(高所にある細い一本道を、主人公たちが手をつないで駆け抜ける、
裂け目を飛んで渡らせて、抱き留めて一回転する、などどこかで見たシーンが…)
これではせっかくの多くのファンタジーに影響を与えた「ゲド戦記」という名作がもったいない。
まるで、宮崎駿というファンタジーに魅せられただけの作品です。
正直言うと、俳優・女優を当てるキャスティングもつらい。
ゲドは大塚明夫、クモは榊原良子でいいんじゃないか…。
そんな気さえしてきます(といっても田中裕子の演技はすごかったですが)。
話は戻って『ブレイブ・ストーリー』。
こちらも最後の方でデッサン狂ったようなシーンもちらほら。
亀山千広プロデューサーということは、テレビアニメもあるのかな。
とにかく、2時間で収まりきっていません。
両作品に言えるのは、この「2時間ではまとまらない」の一言。
設定がわからないまま、話が滑っていっているような2時間でした。
もっと時間をかけてしっかり練って、作り込まれた作品に仕上げていただきたかった。
そういう意味でも3作で描ききった『LOTR』、
7作あるという『ナルニア国物語』はすごい。
と変なところに感心してしまう私でした。
これは僕の勇気の物語 on 自腹で征服 : 2006年08月14日 04:41
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